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パリ・オペラ座の陰翳礼讃 

昭和8年に発表された谷崎潤一郎氏の「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」は仏語で「éloge de l’ombre(意:陰の賛美)」と訳され、建築科の講義等でも使用されている。私は海外の美術館で観音様などが明るい照明の下に陳列されているのを見るたびに少し胸を痛め「ここのキュレーターはあの本を読んでいないのかしら」などと思ってしまう。この著書の中で谷崎氏はかげの中にこそ日本の美の本質があるとし、西洋の美との相違を指摘している。

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われわれ東洋人は何でもないところに陰翳を生ぜしめて、美を創造するのである。(中略)美は物体にあるのではなく、物体と物体の作り出す陰翳のあや、明暗にあると考える。(中略)陰翳の作用を離れて美はないと思う。

雪の降っている日に比叡山を巡礼したことがあった。今でも記憶に残っているのは本堂の暗闇とお香の煙の中で微かに金色の光をはなっていた仏像の美しさである。この時、谷崎氏の文章が視覚化された感があったが、実はパリでも似た感覚を持つことがたまにある。

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先日William Forsytheのモダンダンスを見に行った時もそうであった。白い蛍光灯を使用している新オペラ座と違い、1875年完成のガルニエ・オペラ座は一歩入ると緩いオレンジの明かりに包まれる。金と真紅を基調とした観客席は贅沢で華美な装飾で覆われているにも関わらず落ち着いた品のある空間である。天井の隅に施された金の浮彫模様などは「陰翳礼讃」の文章を彷彿させる。

(前略)もう全く外の光が届かなくなった暗がりの中にある金襖や金屏風が(中略)ぽうっと夢のように照り返しているのを見たことはないか。(中略)私は黄金と云うものがあれほど沈痛な美しさを見せる時はないと思う。

たとえ日本人であっても蛍光灯で育った現代人は西洋にあって暗がりの美を感じることが出来るようだ。この日は真綿紬を着ていったがこの劇場にはやはり柔らか物の方が似合う気がする。今度行くときは金箔袋帯を紋付色無地に合わせてみようか。薄暗い客席内の金色のお太鼓に陰翳の美を見てくれる人がもしかしたらいるかもしれない。

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谷崎潤一郎著「陰翳礼讃」
中央公論社
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コメント

本日も美しいお写真と興味深い文章、楽しませて頂いております☆

非常に恥ずかしながら「陰翳礼讃」未読・・読まなければと思っていた本であります(汗)。とても興味深い事です!

新オペラ座は行った事がないのですが、ガルニエ・オペラ座には以前行った事があります。夜の観劇でしたが、ほの暗い光に浮き上がる大理石と金と深紅の装飾、ものすごい空間だなあと思いました。ゆらゆらとしたオレンジの明かりは大きなポイントですね!ヨーロッパの旧市街の夜道にも、ちょっと陰翳礼讃を感じます(読んでないのに!笑)。

ちなみにその時はマリアニエス主演の嵐が丘を見ました。コンテンポラリーバレーだったのですが、初めてのコンテンポラリー、とてもおもしろかった!全く知識がないままに行ったのでかえって新鮮な驚きがあったのかもしれません。また、あの空間でコンテンポラリーというのもよかったのではないかと思いました。

本日の着姿もとても素敵ですね!!少しさわやかな感じで春を待つ感じがして!そしてすごくきれいな帯ですね~。それから、オペラ座に金箔袋帯のアイディアに脱帽です。ものすごくはえるでしょうね!!またお召しになったらUPして下さいね、楽しみにしております♪

考えさせられます

あかね様

今日も大変興味深く拝読させていただきました。谷崎の本、私も未読なのですが、ちょうど夫が東京に出張するので、その時に買って来てもらい、ぜひ読んでみようと思います。あるいは英語版があれば、それを読んでみてもいいのかもしれませんが。

これからも、ブログ楽しみにしています。

陰翳礼賛

陰翳礼賛がフランスの建築科で使われているとは驚きました。日本の建築科でも使っていると良いですね。今、谷崎が書いた日本は、失われつつありながらも細々と続いているような状況ですね。あの感性を理解できる人も少しずつ減ってきているように思います。
ともあれ私も好きな一冊で、読んでいるといろんな景色を脳内に作り出して、ほぅっと幸せな気分になります。私も今度の帰国時に持ってくるリストに加えました。

書き忘れました

お着物も素敵ですね。水色にピンクが効いて、この紐一本でずいぶん雰囲気が変わりますものね。背景のオペラ座もゴージャス。行ったことのない者にとっては、お着物と合わせて嬉しいブログです。

コメントありがとうございます

*こんにちは!いしのすけさん、
この文庫本の「陰翳礼讃」の章はとても短いものですのでとても気楽に何回も読めました。(他の章の題は懶惰の説、恋愛及び色情、客ぎらい、旅のいろいろ、厠のいろいろ) 「陰翳礼讃」の部分は線を引きすぎていて、本が汚いんですよ。

オペラ・ガルニエ内は本当に素晴らしい空間ですよね。ガルニエにいると「芸術の都」のタイトルは未だに健在している気がします。

公演はガルニエがバレー、新オペラ座がオペラ中心で、今回私が見たものはまったくのコンテンポラリーな作品でした。ここまで由緒と歴史のある劇場で前衛的なものを公演するのが素晴らしいですよね。

*ありママさま、
ありがとうございます。
英語とは言わず、是非ご主人様に原文を持って帰ってきていただいてください。

又是非遊びにいらしてくださいね。

*harukoさん、
建築家で数奇屋やお寺の構造やさりげない装飾に影響を受けていたり、興味を持っておられる方は多いようですね。この本、実はパリに着てからフランス人の建築家に進められて読んだんですよ。

この帯は一番良く締めているのでもっと帯揚げと帯締めで雰囲気を変えれるようにしたいのですが、まだ同系色だけの洋服コーディネイトしかできないのでいつも同じようになってしまうんです。このピンクを入れるだけでも私には前衛的だったんですよ。(笑)

今日も素敵です・・・

あかねさん、こんにちは。
あかねさんのはんなりやわらかもののお姿、いつもながら素敵です!私の普段着きものの後ではほんとに眩しいです~。
「美は物体にあるのではなく~」というくだりが私の中で響いたので、「陰翳礼讃」さっそく買って帰ってきました。今夜から読み始めます。谷崎なんて何年ぶりかって感じですけど(笑)。
また遊びに来ますね。

陰翳礼讃

あかねさん、おはようございます。雪月花です。ゆっくりと読ませていただきました。オペラ座と真綿紬のおきものの、金と銀の奏でる交響曲を聴いているような気持ちになりました ^^ 

『陰翳礼讃』はわたしもお気に入りの一冊で、実はわたしもWeb書店(http://myshop.7andy.jp/myshop/setsugekka_2?shelf_id=02)上にて紹介しております。次の一文が好きです。

「われらの祖先の天才は、虚無の空間を任意に遮蔽して自ら生ずる陰翳の世界に、いかなる壁画や装飾にも優る幽玄味を持たせたのである」

漆黒、と表現されますが、暗闇が日本の文化を作ったともいえるでしょうね。その長い長い暗闇の生活から逃げ出したくて、日本は蛍光灯礼讃の世の中になってしまったのかもしれません。

こちらは今日はうららかな春日になりそうです。梅がちらほら、咲き始めました ^^

ありがとうございます。

*りおさん、
お褒めいただきありがとうございます。りおさんさんのピンク縞のおきものと唐花模様の帯、とても可愛らしいですね。「陰翳礼讃」、どうでしたか。またりおさんのブログでも教えてくださいね。

*雪月花さん、
おはようございます。
Web書店では沢山興味深い本を紹介されているんですね。前から気になっている著書も多く、ますます読みたくなりました。

本当に私も「蛍光灯礼讃」はいただけません。雪月花さんもWeb書店で書いていらっしゃるように、美術館などは作品が作られた時代と背景を考慮した展示の仕方を見直して欲しいと思うことがよくあります。

パリは昨日みぞれでした。春への道はなかなか険しいです。

ピンク

ピンクは冒険だったのですね。水色との組み合わせ、綺麗です。実際のお色を見ていないので見当はずれかもしれませんが、帯揚げに淡いクリーム色みたいなのを持ってきたらどんな感じになるかしら、とちょっと一人で想像していました。
それから、ご本家さまのお薦めどおりきものブログを始めて、勝手ながらリンク張らせていただきました。よろしくお願いします!

クリーム色

*harukoさん、
この真綿紬、実は京都でakeさんにお会いしたときにも着たんですけどその時にほんのりオレンジがかったクリーム色の帯揚げをしたんですよ。^^帯締めもお襦袢も帯揚げに近い色合いで結局冒険はできてなかったんですけど。。

「ロサンゼルスで、着物暮らし」、開設おめでとうございます。こちらからもリンクを貼らせてください。

陰影礼賛

あかねさま 
こちらには、初めて書き込みさせて頂きます。
「芦屋で、着物暮らし」の真美です。
リンク貼って頂きまして、有難うございます。
谷崎潤一郎の「陰影礼賛」恥ずかしながら、読んでおりません。
どちらかと言うと、ヨーロッパの方が間接照明で陰影を大切にしていて、日本は蛍光灯ばかりのような気がしていました。
けれど、よく考えたら、お茶室やお寺は薄暗いですよね。
ほのかな灯りが美しいんですね。
女性も、色んな経験を積む事が、その方のお人柄に陰影や深みを出すような気がします。
遅ればせですが、今日、私のブログにもあかねさまのリンクを貼らせて頂きました。
これから、どうぞ宜しくお願い致します。

*真美さま、こんにちは!
リンク貼っていただきありがとうございます。

高校生のときのお稽古であまりにもお茶室が薄暗かったので先生に「どうして電気つけないですか?」と聞いてしまったことがあったのですが、数年後に「陰影礼賛」を読んで一人で赤面をした覚えがあります。(笑)

これからも真美さんの華やか正統派和装姿、楽しみにしておりますね。

突然の書き込みで失礼致します。私はフランスで建築学科を専攻する学生です。今、建築における陰影について修士論文の執筆中で、偶然ここまで辿り着いた由です。
おっしゃる事良くわかります。長くフランスに居ながら、日本的な空間に惹かれてしまう、不思議なものです。
ところで、マルセイユとパリの学校に通いましたが、陰影礼賛が参考文献に出た事はありませんでした。私は、仏語と日本語で読みましたが、不思議な事に仏語の方がインパクトがありました。では。

*keyaさま、
はじめまして。
建築を専攻されているのですね。マルセイユとパリでは教える内容はどれくらい変わるのでしょうか。

論文テーマが建築における陰影ということですが、これこそ南の国マルセイユと灰色のパリでは大きな違いがあるでしょうね。

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