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お誕生日じゃない日の歌 

「不思議の国のアリス」の中で三月ウサギと気ちがい帽子屋が「お誕生日じゃない日」を祝うお茶会のシーンがある。

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THE UNBIRTHDAY SONG・お誕生日じゃない日の歌

君と僕とが生まれなかった日
なんでもない日 万歳!
誕生日は1年に1度っきり
でもなんでもない日は364日ってことは
年がら年中お祭りだ!
さあ ロウソク消したら願いが叶う 幸せやってくる
なんでもない日 おめでとう!


ディズニー映画では面白おかしく描かれたお茶会のシーンである。ルイス・キャロルが原作を書いたヴィクトリア時代は「Mad as a march hare(三月のウサギぐらい狂っている)」と「Mad as a hatter (帽子屋ぐらい狂っている)」という表現は一般的なものであったらしい。前者は三月の発情期になると狂ったように飛び回ることから、後者は帽子を製造する工程で使用する水銀のために体が震えたり、幻想を見たりする症状が帽子屋に見られたことからだという。

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もうひとつの誕生日プレゼントの九寸名古屋帯。花菱の地紋に桜や菊、笹蔓、七宝などの唐織花横段模様。

昨日の私の誕生日は大切な人達のおかげで本当に特別な一日となった。いっぱい笑って、沢山愛情をもらって、何回も「ありがとう」を繰り返した一日。でもお誕生日が過ぎた今日だって大事な人達がいて、お天気が良くて、ごはんが美味しくて、紫陽花が綺麗に咲いている。

「なんでもない日、バンザイ!」とお祝いできる三月ウサギと気ちがい帽子屋は本当はそんなに狂っていないのかもしれない。私ももっと「お誕生日じゃない日、おめでとう」と言えるようになりたいと思えたお誕生日の日であった。

photos: kimonoichiba.com
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イカットやソンケットについて 

ここ最近、ひどい暑さが続いている。パリ・マラソンが開催される明日の最高気温は27度になるらしい。これでも樺太のサハリンと経度がほとんど同じだというパリ。ましてや今はまだ桜の残る春先である。西洋人は喜び勇んで一斉に週末のカフェでテラスを陣取っているが、あまりにもジリジリと暑い太陽に私はカフェでぐったりしてしまった。

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座っているだけで汗がにじむなんて年末のインド以来である。実はこの時、マレーシア経由でインドに行ったのだが、丸一日を首都のクアラルンプールで過ごす時間があった。日記が前後するが、その時の事を書きとめておこう。

半世紀前までイギリスの統治下におかれていたイスラムの国であるマレーシアの首都は、植民地時代の西洋式建築、モスク、近代的高層ビルなどが混在した街である。東南アジア特有の屋台も出ており、つまみ食いをしながら歩いていると布屋さんが立ち並ぶ道に迷い込んだ。中国シルクとインド糸の輸入が盛んであった頃に生まれたという、ソンケットと呼ばれるマレーシア独自の織物が、所狭しとならんでいる。もともとは王室専用だったというだけあり、金と銀の糸をふんだんに使ったしっかりとした生地は袋帯に出来そうな豪華さである。

もう少し進むと、イカット絣を専門においてあるお店に出くわした。本場のインドネシアでも手紡ぎ綿糸を草木染で仕上げるという伝統的な技術は衰退しているらしい。ましてやこんな所で売っているイカットなどは、あまりいい質のものではないのだろうな、と思いつつも手持ちの紬に合いそうな色合いのものを2つ買い求めた。現在お仕立てに出している写真の紬と名古屋帯になるイカット絣は、今年の袷の季節が始まり次第、袖を通したい組み合わせである。

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まだ袷の季節が終わっていない4月半ばに「今年の袷の季節が始まり次第」という表現は正しくないのかもしれない。でも今はいくらお気に入りの塩漬け色無地一つ紋でも、卵色の付下げでも、袷はまるで着る気になれない異常気象のパリである。

パリ・オペラ座松竹大歌舞伎 

ヨーロッパでは日本で桜の開花がニュースになることがニュースとして取り上げられている今日この頃である。今年も日本の桜は見られなかったが、その代わりに日本でも珍しいという豪華な配役の歌舞伎公演を見る機会に恵まれた。パリ・オペラ座での松竹大歌舞伎である。いつものまばゆいオペラ座に入ると、柿、黒、萌葱の定式幕(じょうしきまく)がかけられており、共に四百年の歴史を誇る歌舞伎とオペラの劇空間がなかなかすんなりと共存していた。

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市川家に伝わる歌舞伎十八番「勧進帳」では市川團十郎と海老蔵父子が交代で弁慶と富樫を演じ、ロンドン公演にも出演していた亀治郎が義経、という配役である。「口上」では一座の幹部俳優9人全員がかみしも(裃)姿の正装で初お目見えのご挨拶をフランス語でこなし、市川家伝統の「にらみ」を団十郎が披露した。

もちろん花道などないガルニエの舞台は歌舞伎座のそれより横幅が狭いだけでなく、天井が高く、色々工夫が必要であったらしい。普段はオーケストラが入る部分に所作台をかぶせ、観客席の真ん中の通路が花道の代わりである。

フランスのメディアでは今回の公演の劇評よりも歌舞伎の世襲制度をもの珍しく紹介している記事が多いようだ。いくら評論が好きなフランス人でも、演技を評価出来るほどの歌舞伎通のジャーナリストはまだ少数なのかもしれない。歌舞伎を目新しいものとして取り上げるだけではなく、ひとつの芸術として品評できる目をこの国で養うには後どれくらいの歳月がかかるのだろう。

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最後の狂言は「紅葉狩(もみじがり)」。戸隠山に住む「紅葉」という鬼女が紅葉の下で宴を催す美女に化けて、、というあらすじの舞踏の大変美しい華のある演目である。ただ花盛りのこの時期にどうして「紅葉狩」なのだろう、という疑問が日本人として残った。でも桜の開花がニュースになることがニュースになるこの国では私の疑問自体が疑問となることだろう。
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