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オペラ 「Salomé」 Opéra Bastille 

踊りの褒美として洗礼者ヨハネの生首を所望し、銀の皿に乗ったそれに口づけした王女。新約聖書のエピソードを題材にオスカー・ワイルド(Oscar Wilde, 1854- 1900)が仏語で書いた戯曲「サロメ」をもとにした絵画は数多くあるが、早逝したデカダンスの画家、オーブリー・ビアズリー(Aubrey Beardsley, 1872- 1898)が描いた「サロメ」の魅力を超える作品は少ないのではないだろうか。

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1891年に書き上がった「サロメ」は翌年サラ・ベルナール主演により上演されるはずだったが、聖書の人物舞台化禁止検閲のため、中止に追い込まれている。ようやく5年後にパリで初演された時は「サロメ」の英訳を引き受けたアルフレッド・ダグラス卿との男色事件により有罪を受けたワイルドは牢獄で強制労働に服していたという。ビアズリーの挿絵はダグラス卿が訳した英語版サロメために描かれたものである。

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ワイルドはビアズリーのサロメが気に入らなかったらしい。ビザンティン的な自分の戯曲に対してビアズリーの挿絵は「日本的すぎる」と言っている。ビアズリーはジャポニズムの色濃い作家として必ず挙げられる画家の一人であり、この挿絵の衣装も、平面的なコンポジションも浮世絵の影響を強く受けた結果だとされている。

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リヒャルト・シュトラウスがオペラ化した「サロメ」を先日見たとき、頭に焼きついたイメージの力に驚いた。ビアズリーの挿絵の印象が私の中で強すぎるため、舞台を見ていても何かが違う、と感じてしまうのである。グロテスクさが足りない。退廃芸術の匂いがしない。素晴らしいオペラなのに、なんとなくがっかりしてしまったのだ。

その日の着物は江戸紫に楓が染め抜かれた付け下げにしたのだが、これは私の所有しているビアズリー作品集の表紙が紫色であるのと無関係ではない。私にとっての「サロメ」はシュトラウスの音楽でも、ワイルドの戯曲でも、新約聖書でもなく、ビアズリーの絵に集約されるようである。
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植物素材の織物 Etoffes végétales  

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(左上)フィリピンの伝統織物、パイナップルを使ったピーニャ。フランス人作家の作品
(右上)苧麻(ちょま)を原料とする宮古上布、日本重要無形文化財

ここのコメントで薦めていただいた志村ふくみ、鶴見和子両氏の対談集「いのちを纏う」を読み、少し植物染色を理解できたような錯覚に陥っていた矢先、Etoffes végétales(意:植物性織物)と題されたパリ15区、個人宅での展示会に誘っていただいた。フランス、ドイツ、ユーゴスラビア、そして日本の女性織物作家4人の植物繊維を原料にした作品展である。

着物への興味と「植物素材」という今の私のキーワードが融合したこの展示会で私は3時間をも過ごし、いらしていたヨーロッパの作家の方たちに失礼な程、3時間のほとんどを宮古上布の鑑賞と宮古島出身の作家さんへの質問に費やすという子供っぽさをさらけ出した。

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(上)植物染料で染められた苧麻糸

この本のお二人の会話はきものについての対談を超え、自然や社会についての話にまで掘り下げられる。一番印象に残ったのは植物染料のみを使用し、色を追求されてきた紬織の人間国宝、志村ふくみさんの自然に対する崇高ともいえる敬意である。

志村:ゲーテは「植物は秘密を打ち明けてくれる」と書いているんです。人間が勝手に木を伐って、色を出して、ああ、植物染料の色が出た、では秘密は打ち明けてくれないんです。そうじゃなくて、植物からいただくんだ、どんな色が出るかわからないけども、いただくんだと思った時に初めて、植物が秘密を打ち明けてくれ始める。植物は自分を投げ出して色をみせてくれるのです。植物に対する畏敬の念が大切ですね。(引用「いのちを纏う」)

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(上)弘法さん出身の赤銅色紬と唐花模様名古屋帯

宮古上布一反を仕上げるために2ヶ月は最低かかるという。自然から生まれた染料や繊維と長い間ふれあい、向き合っていると化学で作られた素材とは出来ない対話が出来るようになるのだろうか。この一冊の本のおかげで一つの展示会の見方が大分広がったように思う。また少し日本の着物を理解できたような嬉しい錯覚に陥っている。


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「いのちを纏う―色・織・きものの思想」
志村ふくみ・鶴見和子
藤原書店

うやさん、どうもありがとうございました。
同書に関するakeさんの「京都で、着物暮らし」の記事
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