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南座で「塩漬け」色無地一つ紋 

親友との恒例行事となりつつある南座顔見世に2006年もめでたく一緒に足を運ぶことが出来た。彼女には普段から着物について教わってばかりだが、この日二人共が着た「塩漬け繭」の着物を紹介してくれたのも他でもない彼女である。



日本史の教科書に載っていた製糸工場で働く女工さんの写真をとても鮮明に覚えている。生糸は明治時代の主要な輸出品であったと習った。中学生の時は厳しい労働生活を強いられた貧しい女工さんの話に胸を痛めたが、養蚕・製糸業が産業化されたことによって日本の高質な織物技術が失われていったことは知らなかった。

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(上)「象牙色に、」とお願いした色無地に同色でグラデーションをつけた刺繍一つ紋。

均質な絹の大量生産が求められるようになるにつれ、絹の本性を損なわない、素材の多様性を生かしたそれまでの織物作りが消えていったという。その失われた養蚕・製糸の技法を長年研究され、優れた布作りを追求されている志村明という方がいる。長野県にある工房、「勝山織物飯島きぬの里」では志村氏が指揮を取り、工業化以前の技法を用いた養蚕、製糸、織りを一貫して絹織物を生産されており、この着物の糸もここで生まれたものである。

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(上)友人はロイヤルブルーの色無地に染抜き一つ紋。帯は二人とも洛風林。

志村氏の繭の保存法についての研究は特に斬新なものであり、近代の絹織物の常識を覆したという。明治以前は「生操り」と呼ばれる生繭から糸を紡ぐという方法が採られていたが、工業化に伴い繭を長く保存させるため、乾燥させることが一般的になった。実はこの過程が絹糸の質を著しく悪くさせるらしい。志村氏は絹糸本来の美しさを失わない方法として繭の「塩漬け法」を中国の古書から見出され、塩を使って殺蛹(さつよう)することにより、絹糸の光沢やしなやかさをさらに引き出せることを明らかにされた。

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一人で着付けが出来るようになった一昨年の夏、この工房を訪問させていただける機会に恵まれた。この山里深い場所で生活し、織物作りに専念していらっしゃる数人の女性達は同年代で、絹についての豊かな知識と作り手としてのプライドを持ち合わせていらした。近代化の名の元に葬られた芸術品の小さな破片を一つずつ探して組み合わせるような仕事である。本当に良い物を正しく理解しようという着る手の気持ちは、この崇高な努力の小さな手助けになれるのではないだろうか。
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帰洛の悦び 

時折「どこでもドア」が普及した世の中を夢に描いたりする。日本が恋しくなったときである。両親の西海岸での大学時代は一週間かけて航海していたと聞いた。その頃に比べると確かに世界は小さくなったのだろうが、私にはまだまだ大きい地球と遠い日本である。

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(上)京都祇園花見小路、創業およそ300年の「一力亭」。

日本の小さな断片ならパリでも経験することができる。コンコルド広場近くのとらやさんでお薄をいただくこともできるし、お洒落で美味しい日本食屋さんも増えている。でもこれからも日本の風土の中でしか生まれないものがあり、日本で見るからさらに美しいと感じるものがあるのだと京都に帰るたびに実感する。

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(左上)祇園にある割烹屋さんのイチジクのお吸い物。器の模様は萩と椋鳥。
(右上)ゑり善さんの展示会でいただいたお薄茶。主菓子は桔梗餅と白露。

もしグローバル化というものが世界の文化の画一化をも意味するのなら、能率的だが味気ない世の中に向かっていることになるだろう。日本ほど四季への高い感受性を持っている国もそれを洗練された文化として表現できる国民も私は他に知らない。

少し不便なのは我慢するとして、「どこでもドア」はこのままずっと開発されないほうがいいのかもしれない。

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(上)二度引き染めをしていただいた色無地一つ紋と洛風林の色段鳥襷袋帯。

京都四条南座、四代目坂田藤十郎襲名披露狂言 

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お正月一時帰国の際に5歳の時からの親友と京都南座、顔見世興行に行くのも今年で3年目。恒例行事となりつつある。毎年彼女にはチケットやお弁当の手配だけでなく、着物を借り着付けまでもお願いしていたのだ。今年から着物だけはようやく彼女の手を借りることもなくなった。と言っても普段はお仕立てや洗い張りからきものまわりの事まで彼女が京都からサポートしてくれているからこそ私はパリで着物を楽しむことが出来ている。そもそも私のきもの熱のきっかけは成人式以来初めて顔見世のために彼女に着物を着せてもらった事と無縁ではない。

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友人はボタン雪がハラハラ舞う夜空を連想させる深い茄子色の紬にパンテールの柄が入った洛風林半幅帯。私の桜鼠色の手描き付け下げは父方の伯母にいただいたもの。丸窓に四季の草木が大胆に配置されている。伯母は一度も袖を通さないまま、かれこれおよそ60年経つらしい。

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「本朝廿四考(ほんちゅうにじゅうしこう)十種香(じゅうしゅこう)」の人形浄瑠璃の動きを真似た藤十郎の演ずる八重垣姫(やえがきひめ)に感心しつつ、「相生獅子(あいおいじし)」の姫、菊之助の美しさに言葉を失ってしまう。

京都四条南座
京都市東山区四条大橋東詰
Tel: 075.561.1155
http://www.shochiku.co.jp/play/minamiza/index.html
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